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大竹伸朗の魅力
エッセイ

text:ドイケイコ

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「ジャリおじさん」、大竹伸朗・著、1993年 福音館書店

初めて目にした大竹伸朗の作品は、絵本「ジャリおじさん」だったと思う。表紙に描かれた鼻先にチョロッとヒゲがある風変わりなおじさんがなんとも訝しく面白げで、手にとらずにはいられなかった。



その後、大竹は絵本のみならず、小説やエッセイ、そして多くのアート作品を作成していると判明。また、日本を代表する現代美術作家のひとりであることも分かった。
2006年、大竹は北海道、東京、香川で個展を開催した。中でも、国内最大級の面積を誇る東京都現代美術館での「大竹伸朗 全景1955-2006」展(以下、「全景」展)は、企画展示室全フロアを使用する、日本の現存作家の個展としてはじめての超大規模なものであった。この時期、各種メディアはこぞって大竹を取り上げ、2006年12月号の美術手帳の表紙では「東京に落ちた最後の美術爆撃」とまで記されていた。

「全景」展の感想をひとことで言うと、海外旅行をしてきたみたい、である。精神的には満たされるが肉体的にはどっと疲れる感じが似ていた。その理由として、展示作品総数が2,000点もあったことや、作品自体、海外のものを題材にしたのが多く、それらの画材として現地で拾ってきたものが多々使用されていたことが考えられる。しかし、それ以上に、同一人物が作ったと思わせないほど多種多様な作風と完成度の高さが最大の理由であっただろう。とにかく、この展覧会を通じて、大竹の器用な才能と絶大なるパワーに圧倒されずにはいられなかった。

私が「全景」展に訪れた日、丁度、「大竹伸朗トークイベント 歌謡曲相撲 −木場場所−大竹伸朗×湯浅学」が催され、会場では3名のおっさん達が60〜70年代の歌謡曲を嬉しそうに流していた。それは少年がどこかしらから見つけてきた、とっておきの宝物を自慢する姿にも見えた。ふと、大竹が画材を収集してくる姿が浮かび、思わず頬がゆるむ。トーク自体も流す曲にまつわる話がメインで、世代は違えども同じ歌謡曲愛好家として親近感をおぼえた。

強烈な個性とパワーを内に秘めながらも、あくまで自然体、というギャップにクラッときながら、今後、大竹伸朗からますます目が離せない、と確信した。
by art-drops | 2006-12-28 00:53 | レポート
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