レポート text:金子きよ子 美術の面白いところは、すべてがそうだというわけではないが、小説や映画などと比較して、作者の思いが言葉というある程度意味を限定するものを排している分、より、観る側の心模様を投影して、様々に受け取れるところだと思う。 私は常々、人は自分の中にあるものに反応し、そうではないものにはそれほど深く反応しないと思っている。 混浴温泉世界で展開された数々の作品は、どれもとても興味深いものだったが、とりわけ正反対の意味で、2つの作品が最後まで自分の中に引っかかった。 1つは、観ることを拒否してしまったことで。 そして、もう1つは、2度訪れたことで。 それぞれ、“現時点での”自分の心模様について、深く掘り下げるきっかけをもらったように感じている。 観ることを拒否してしまった作品については、観ていないから、今何かを述べることはできない。 ただ、観ることを拒否したという行為そのものが、観たくないものから目を背けたい“現時点での”私と、一方で、なぜ観なかったのだろうと今でも気にしている自分が、目を背けてはならない、向き合わねばならないと葛藤しているということに改めて気づかされたりした。 2度訪れた作品については、レポート3で述べることとして、別府を訪れた無数の人々が街を彷徨い、作品と対峙することで、一人ひとりのそれぞれの現在の心境を作品に重ね合わせ、新たに無数の物語が立ち上っていくと想像すると、とても素敵でそれ自体、とても意味のあることだと感じた。
by art-drops
| 2009-06-09 12:15
| レポート
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