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混浴温泉世界レポート3~今目の前にあることに向き合う~
レポート

text:金子きよ子

最後に、2度訪れた作品について。

ラニ・マエストロというマニラ(フィリピン)出身の女性アーティストの作品で、吐く息をテーマにしている『Higugma(Breath.息)』という作品だ。

築100年になろうかという古い長屋の1階と2階の壁一面に、蝋燭の炎から立ち上がる煤(スス)によって和紙に描かれた抽象画のインスタレーション作品が立てかけられている。

ボランティアの女性の解説によると、彼女は血のつながらない母に育てられたという。しかし、親子は非常に仲がよく、まるで水墨画のようにも見える淡い色調の作品にはうっすらと、しかしびっしりとフィリピン現地の言葉で『愛している・信頼している』といった意味合いの言葉が描かれている。

エピソードを聞いて、余計に心に沁みたその作品にもう一度会いたくて、帰宅する日、再度長屋を訪れた。

たまたま運が良く、他に客はおらず、作品と一対一で向き合ううち、昨日観た印象と何かが違って見えることに気がついた。

昨日は、優しい、暖かさとかぬくもりを感じたのだが、もう一度訪れたとき、そこには何か優しさだけじゃない強さと厳しさと、そして、『意思ある愛』のようなものを感じたような気がした。

まるで、温かくて居心地の良い温泉が恋しくて、もう一度温泉に入りたいと訪れた私に、『今目の前にある現実に向き合いなさい』と厳しく、しかし、愛情を持って、そっと肩を押してもらったような気すらした。

作者が何を思って作品をつくったか、私は深く理解していない。

しかし、一方で、一つの作品を媒介として、現時点での自分自身と深く向き合うきっかけを貰っただけでも、今回の混浴温泉世界を訪れて良かったと心から感謝した。

今目の前にあることに向き合う。

それは、今私がもっとも強く望んでいることなのかもしれない。
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by art-drops | 2009-06-09 12:40 | レポート
混浴温泉世界レポート2~美術は“現時点での”自分を投影する~
レポート

text:金子きよ子

美術の面白いところは、すべてがそうだというわけではないが、小説や映画などと比較して、作者の思いが言葉というある程度意味を限定するものを排している分、より、観る側の心模様を投影して、様々に受け取れるところだと思う。

私は常々、人は自分の中にあるものに反応し、そうではないものにはそれほど深く反応しないと思っている。

混浴温泉世界で展開された数々の作品は、どれもとても興味深いものだったが、とりわけ正反対の意味で、2つの作品が最後まで自分の中に引っかかった。

1つは、観ることを拒否してしまったことで。

そして、もう1つは、2度訪れたことで。

それぞれ、“現時点での”自分の心模様について、深く掘り下げるきっかけをもらったように感じている。

観ることを拒否してしまった作品については、観ていないから、今何かを述べることはできない。

ただ、観ることを拒否したという行為そのものが、観たくないものから目を背けたい“現時点での”私と、一方で、なぜ観なかったのだろうと今でも気にしている自分が、目を背けてはならない、向き合わねばならないと葛藤しているということに改めて気づかされたりした。

2度訪れた作品については、レポート3で述べることとして、別府を訪れた無数の人々が街を彷徨い、作品と対峙することで、一人ひとりのそれぞれの現在の心境を作品に重ね合わせ、新たに無数の物語が立ち上っていくと想像すると、とても素敵でそれ自体、とても意味のあることだと感じた。
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by art-drops | 2009-06-09 12:15 | レポート
混浴温泉世界レポート1~混浴温泉的世界を旅して~
レポート

text:金子きよ子

c0103430_109634.jpg先週末、私は大分県別府市で開催されている別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」(4月11日(土)~6月14日(日))に行ってきました。


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by art-drops | 2009-06-06 10:06 | レポート