祝!世界進出(ヴェネチア・ビエンナーレだけど…)
レポート

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先日(1月12日)に渋谷のO-nestというクラブで《ドラびでお》のイベントがあったので、溜まっていた仕事を丸投げして19時に会場入りした。



《ドラびでお》とは作品名である。ドラマー一楽儀光 が「仕掛け」のあるドラムキットでリズムを刻むことで、備え付けのモニターに様々な映像が投影される。ドラムによる音と映像さらにはその映像の音声の変化が一体化した作品と言えるだろうか。「仕掛け」としたのはバスドラム、スネアハット、シンバルが映像の早送り、巻き戻し、他の映像への切り替えのチャンネルとなっているためだ。だから、刻まれるリズムと映像のコマの進行速度が同じになり、映画のモンタージュ効果よりもショック作用が強く働き、見慣れた映像の意味を異化させる(詳細は→ドラびでお解説コーナーにて)。

さて、話しを戻すと、今回は従来の《ドラびでお》とやや異なっていた。最初はモニターに映像を映し出さず全身金粉のダンサーのダンスと一楽の生ドラムというセッション。そして映像とドラムによる従来の《ドラびでお》。佐伯誠之介猫ひろし のお笑いライヴ(?)。そしてビンゴ大会、再び《ドラびでお》と五部構成で、飽くまで《ドラびでお》はその一部。後者の三つは、ここでは割愛するとして前者二つに焦点をあてる。

ライブが始まって従来通り一楽がドラムを叩いてモニターに映像が映し出されるのかと思っていたら、金粉を全身に纏った褌一丁のダンサー6名から成る新世界ゴールデンファイナンス (うち女性二人はインドの古代宗教の女性像を思わせる化粧でそれ相応の冠を被っていた)が登場。一楽が生のリズムを刻む。舞踊なのかダンスなのか、記者の勉強不足のため、よくわからなかったがダンサーが飛び跳ねてみたり、ミミズのように舞台で蠢いていた。始まって20分くらいはダンサーの踊りが中核を成し、一楽は飽くまで彼等のバッキングでリズムを刻んでいるように見えた。この雰囲気が変わったのは、ドラムキットの横に据え付けてあったMacを一楽がいじりだしてからだった。

真っ暗だったモニターにダンサーの映像が何枚かに分断してモニターに投影され、それぞれがランダムに、縦横伸縮し始め、生ドラムに機械音が混じり始めた。どこかで聞いた音だと、記憶を反芻するとセニョール・ココナッツのカバーによる《Smoke on the Water》と《Beat it》という曲でダンサーのマッチョなダンスとは裏腹にマンボ。ロックバンド出身の一楽だけに、この選曲は記者にとって意外であった。
ということはMacでドラムキットに「仕掛け」を入れたということなのだろう。飽くまで推測の枠だが、クラブに設置されたカメラで撮った映像を加工するソフトを用いて、Macと連動したドラムキットのスイッチで反復やストップモーションとなりモニターに投影されている。どことなく好き勝手に踊っていたダンサーが緩急あるダンスを始め、一楽の選んだ曲と彼自身の生ドラムに従順になっていくように見えた。この曲のほかに二、三曲クラブ調の曲がかかりそれが終わると、ダンサーが舞台から退き、従来の《ドラびでお》が始まった。


映像とリズムの組み合わせと言ったが、著作権や肖像権を侵害するであろう映像が、これでもかとばかりに、投影される。皇族報道、北朝鮮の指導者を讃えるニュース、ブッシュ大統領の教書演説や女子十二楽坊のライブに彼女らをこき下ろすキャプション映像、李博士(イ・パクサ)※1 )、《キル・ビル》、《シャイニング》等。これらがリズムに合わせてコマ送り、画像の切り替えを繰り返し絶妙な笑いを生み出す。特に、記者が爆笑したのは映画《バトルロワイアル》の生存者をカウントする場面のモンタージュ映像である(※2 )。ストーリーを省きカウントダウンの場面のみが投影され、誰が生き残っているのかという場面の時に金総書記、昭和天皇、最後にブッシュ大統領の映像とキャプションが差し挟まれる。つまり現在の国際政治情勢(昭和天皇はこの埒外なのかどうか)と映画のストーリーでの架空の殺し合いをリンクさせるというストーリーを創り出した。新たな試みとして、佐伯誠之助とのジョイントではアダルトビデオの映像を用いた「不気味な」《野球拳》のパフォーマンスを行い、観客を沸かせていた。
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『野球拳』の「無惨な」映像をバックに猫ひろしが生まれたままの姿で登場。彼曰く「何だよー!まだ野球拳の続きかと思ったよー!」と。

まぁ、このイベント自体が『円盤』というインディーズ系の音楽を扱うショップの「祭り」だからライヴというよりもカーニバルといった方がいいのかもしれない。「暗黒」というレッテルを貼られていた時代を「カーニバル」によって、民衆のダイナミックスが蠢いていた時間と新たに解釈し直したのは、言語学者のミハイル・バフチンである(※3)。カーニバル自体が、一日限りの反権力、禁忌領域侵犯を意味するだけに、《ドラびでお》を含んだこのイベントにも「カーニバル」という表現が、やはり相応しい。

今回の「作品」で単にリズムと映像のリンクから面白さを導くに留まらず、ストーリーテーラーの一面を再認識した。また、《ドラびでお》本作では以前のライヴで用いた映像と音源を多く利用していることから新しさはなかった。これは、正確なリズムを叩かないとドラマーの一楽が意図する「笑い」もしくは映像演出が創りだせないということであろう。というのもある映像を同じリズムで反復させるには、正確無比なドラム演奏を必要とするからだ。“笑い”の裏には緻密な計算が「仕掛け」られていることもあらためて思い知らされた。

公的な場で上映(演奏?)されたら抗議間違いなしの作品だが、彼は今年度のヴェネチア・ビエンナーレ招待作家である(※4 )。どう振る舞い、叩かれるのかが楽しみだ。


※1イ・パクサ(1954-)は韓国の歌手。ポンチャックという韓国の大衆音楽を安価な電子音響器によってディスコ風にアレンジし人気を集める。)電気グルーヴにより日本に紹介され、一時期はテクノとしてカテゴライズされる。特徴として、様々な歌謡曲を繋げて歌うという形式から曲間に合いの手として韓国語のスキャット(「ジョワ・ジョワ」「ウヒョー」「デュ・デュ」といった擬音語が多い)が入るのだが、これを強調した形で歌い上げている。日本のポップスを数多くカバーしているので、韓流にハマる方々には是非見て頂きたい→(

※2 )作者は高見広春。第五回日本ホラー小説大賞の最終選考に残るが、審査員から不評を買い、受賞を逃す。漫画では、田口雅之作画のもと『少年マガジン』で2000年から5年にわたり掲載。映画版は深作欣二監督のもと2000年12月6日に公開される。中学生が無人島で殺し合うという内容で、少年犯罪が多発化し社会問題となっていたことから、話題を呼んだ問題作。

※3ミハイル・バフチン 『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』川端香男里訳, せりか書房, 1980

※4 )1895年創設の国際美術展。 100年以上の歴史を誇り、最も権威ある大規模な現代美術の国際展と言える。現在では国際音楽祭、国際映画祭、国際演劇祭、国際建築展などを独立部門として抱えている。参加国の国別のパビリオンと数十カ国と地域の芸術家達の作品が出展される。二年に一度開催され、参加国は自国のパビリオンで自国作家の展示を行う。国別パビリオンはその都度、当該国の芸術家もしくはキュレーター、研究者が選出され彼等により芸術家が選定される。第52回(今年度開催)港千尋がコミッショナーを務め、選定作家は岡部昌生。察するに、《ドラびでお》は国際音楽祭に出演予定なのだろう。





 
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by art-drops | 2007-01-20 11:15 | レポート
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