忘れられない作品
エッセイ

text:金子きよ子

2001年、東京オペラシティーアートギャラリーで、小谷元彦さんの作品「9th Room」を観た。



私はその頃初めて現代アートというものに出会ったばかりで、観るものすべてが新鮮だった。けれど、小谷元彦さんの作品はそんな現代アートの中でもとりわけ印象に残った。四角に囲われた四、五人ほどしか入らない狭い空間に、時間交替で観客は入る。壁面にはプロジェクターから投射された映像が次々と投射されていく。「9th Room」とは、ダンテの「神曲」の地獄の最下層にある悪人が最後に連れてこられるという第9番目の部屋、天と地が逆転する底なしの沼をモチーフにしており、また、京都の養源院の血天井からもインスピレーションを得ているという。血天井のシーンでは、壁面に血飛沫が飛び散る。

しかし、なんといっても圧巻だったのは、上下に流れる滝のシーンだった。上下の天井はミラーによって構成されているため、滝が流れる映像が壁面に投射されると、大轟音とともにミラーに果てしなく映る遥か上から流れ落ちる滝に自分がどこまでも包まれていくような気がした。真っ青な水にどこまでも包まれた世界は、息を呑むほど美しかった。ミラー、壁面投射、限られた空間、限られた時間、映像作品ならではの良さをこれほどまで出し切っているのがすごいと思った。

記憶にこびりついて今でも離れない。機会があるなら、もう一度観たいと思う。忘れられない作品だ。
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by art-drops | 2006-12-18 07:00 | レポート
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